その夜、僕は忍者でした。
3歳の上の子の寝かしつけ。所要時間、1時間12分。トントンのリズム、手を止めるタイミング、呼吸が深くなるまで待つ忍耐。すべて完璧でした。
あとは、部屋を出るだけ。
ここからが本番です。
かかとから、ゆっくり体重を移す。フローリングに負荷をかけない。息を止める。ドアまで、あと3歩。
いける。
いけるぞ。
ミシッ。
床、お前だけは味方だと思っていた
音量にして、たぶん耳かき一杯ぶん。でも深夜の寝室では、雷です。
振り返ると、娘が布団の上に座っていました。目が合いました。
「……あそぶ?」
遊びません。振り出しです。
2周目の寝かしつけは48分でした。合計2時間。日付が変わりました。
敗因分析(まじめな顔で)
- フローリングは夜に鳴く。昼間のリハーサルでは無音だった床板が、夜だけ自己主張してくる。温度と湿度のせいらしいです。
- 体重移動では消えない。30代の体重は、どう分散しても30代の体重。
- 寝入りばなの15分は浅い。「寝た」は、だいたいまだ寝てない。
対策として、後日、鳴る床板を昼間に全部踏んで回り、部屋の見取り図に印をつけました。
妻「なにその図面」
検証の結果、安全なルートは壁沿いに半周する遠回りコースだと判明しています。毎晩、壁伝いに退出する父。防犯カメラがあったら通報される動きです。
まとめ
寝かしつけは、退出までが寝かしつけです。
なお、季節が変わったら鳴く床板の位置も変わりました。図面は無事、ただの紙になりました。


