にじパパTRANSMISSION

やっと寝た……と思って布団に置いたら、また泣いた。

これを、1日に何回やったか分かりません。

腕の中では泣き止んでいる。息も落ち着いている。もう寝た、と思う。置く。泣く。

長いあいだ、僕はこれを「寝かしつけが下手」の一言で片づけていました。でも、ちがった。「泣き止む」と「寝る」を、同じことだと思っていたのが間違いでした。

ARCHIVE / 4コマPANEL 1—44コマ漫画。1コマ目、父が腕の中で眠った赤ちゃんを見て「やっと寝た」。2コマ目、赤ちゃんをベビーベッドに置く。3コマ目、置いた瞬間に赤ちゃんが泣き出し、父が「またか…」。4コマ目、父が座り込み「泣き止むと寝るは別だった」と気づく。

4コマ:「泣き止んだ」で油断すると、たいてい置いた瞬間に泣く

寝かしつけは、ひとつの問題じゃなかった

調べ直して、いちばん効いた整理がこれです。寝かしつけには、少なくとも4つの別々のゴールがあります。

  • 泣き止む(いま、苦痛やぐずりを鎮める)
  • 寝つく(入眠までの時間を短くする)
  • 寝続ける(夜中に起きる回数を減らす/総睡眠時間を延ばす)
  • 安全に寝る(眠っているあいだ、気道がふさがらない・窒息しない)

厄介なのは、ある技が1つ目には効いても、2つ目や3つ目には効くとは限らないことです。たとえば「抱っこして歩く」は泣き止ませには使えますが、それで夜通し眠るようになるわけではありません。実際、生後早期に抱っこの時間を増やした試験では、泣き・ぐずりは減った一方で、睡眠時間は有意には増えませんでした。

「魔法の1つの方法」を探しているうちは、たぶん見つかりません。いま自分が解こうとしているのは4つのうちどれかを先に決めると、道具が選べます。

「鎮静する場所」と「眠る場所」は、別物だった

もうひとつ、分けておくと安全に効くのがこれです。

赤ちゃんが眠ってくれる場所には、「介護者が起きて見ている間の、鎮静のための場所」と、「介護者も眠ることを前提にした、睡眠のための場所」があります。この2つは、同じではありません。

腕の中、抱っこひも、ベビーカー、チャイルドシート、電動スイング——ここで眠る赤ちゃんは多い。でもこれらは前者、鎮静する場所です。傾いていたり、座った姿勢で顎が胸につきやすかったり、ベルトや布が顔の近くにあったりします。

米国で座位装置(チャイルドシートなど)中に起きた乳児死亡を集めた研究では、その多くが本来の移動用途ではない使われ方——到着後もシートのまま寝かせ続ける、家の中で簡易ベッド代わりにする——で起きていました。症例の集まりなので発生率そのものは示せませんが、「眠ったからこのまま」を支持する材料にはなりません。

だから、原則はシンプルです。眠ったら、できるだけ早く、仰向けで・固くて平坦な・何も置いていない乳児用の寝床へ移す。チャイルドシートは走行中の衝突から守るために必要で、移動中に眠ること自体は現実に起きます。問題は、着いた先でもシートごと寝かせ続けることのほうです。(安全な寝床そのものの作り方は、別記事にまとめてあります。)

だから、順番で考える

4つのゴールと、2種類の場所。これを踏まえると、夜の動き方は「刺激をどんどん強くする」より「順番に上げる」ほうが安全になります。

  1. 原因を確認する。 空腹・おむつ・げっぷ・暑さ・衣類。呼吸が苦しそう、発熱、哺乳不良、反応が鈍いなどがあれば、寝かしつけの技の問題とみなさず、医療評価を優先します。
  2. 低刺激から。 抱く、静かに話す、歌う、明かりを落とす。
  3. まだ強く泣くなら、安全な場所で短時間、抱っこして歩く(これは別記事にした「輸送反応」の話です)。眠っても、すぐ置かずに数分そのまま抱いてから移すと、置いた瞬間に起きにくくなります。
  4. 眠ったら、平坦で固い寝床へ(=section 2)。
  5. 介護者が眠い・ふらつく・怒りを感じたら、そこで中止。赤ちゃんを安全な寝床に仰向けで置いて、数分離れる。交代を頼む。これは「努力不足」ではなく、いちばん安全な判断です。

WHOも、1歳未満の赤ちゃんをベビーカーや抱っこの中などに一度に1時間を超えて拘束し続けないよう勧めています。寝かしつけ専用の試験ではありませんが、「長く固定し続けない」という一般的な後ろ盾になります。

まとめ

寝かしつけが下手だったんじゃなくて、1つの問題だと思っていたのが間違いでした。泣き止む・寝つく・寝続ける・安全に寝る。4つに分けて、いま解きたいのはどれかを決める。眠ったら平坦な寝床へ。自分が限界なら、抱き続けずに置いて離れる。

これだけで、夜の迷子がだいぶ減りました。

なお、「置いた瞬間に泣く」問題そのものには、ちゃんと名前と対策があります。それは次の記事で。

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※この記事は論文・公的資料の紹介で、診断や治療の代わりにはなりません。睡眠環境や気になる症状は、健診やかかりつけの小児科で相談してください。
主な出典:AAP 安全な睡眠に関する方針声明・技術報告(2022年更新)/WHO 5歳未満の身体活動・座位行動・睡眠に関するガイドライン(2019)/米国の座位装置での乳児死亡に関する症例研究(Liaw et al., 2019)/こども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように」。詳しくは こども家庭庁WHO へ。